灘が国語の入試で伝えているメッセージ

灘の教育理念の根幹には、創立顧問・嘉納治五郎が定めた校是があります。

  • 精力善用(自分の心身の力を、最も効果的に活用すること)
  • 自他共栄(自分だけでなく、他者とともに栄えること)

柔道の精神をそのまま学校運営の理念に据えたこの言葉は、一見、国語とは無関係に見えます。しかし灘の過去問を丁寧に読むと、「自他共栄」が、国語という教科を通じてもっとも具体的に実践されていることが見えてきます。

灘国語・核心メッセージ

「自分から遠い立場に置かれた他者を、言葉だけを頼りに想像し、自分ごととして引き受けられるか」——灘はこれを国語入試で毎年測っています。

そしてその想像力は、「わかったつもりで終わらせず、本文にない言葉で自ら補い、理解を再構成できて初めて『読めた』とみなす」という国語科の知性観と一体になっています。

灘の入試に登場するのは、アフリカの貧しい子ども、敵国の兵士、沖縄で戦死した兄を持つ人、生活保護家庭の女子、視覚障害者、発達障害と診断される子、妊婦、そしてガザの子どもたち——受験生(12歳・男子・多くは経済的に安定した層)から、意図的に遠いところにいる人々です。言葉こそが、この「遠さ」を越えるための唯一の道具なのです。

出題傾向は「核心」とこう結びつく

灘の出題テーマの選び方には、明確な意図が読み取れます。

① 「遠い他者」を毎年据える構成

辻村深月、上橋菜穂子、石牟礼道子、稲垣えみ子、安田夏菜、三宮麻由子——起用される書き手には女性が非常に多く、詩も齋藤惠美子、山崎るり子、三角みづ紀など。男子校であることを踏まえたうえで、あえて女性の語りを浴びせているように見えます。男子だけの視点では死角になりがちな経験を、国語科が構造的に補っている格好です。

② 教養主義から「生活とケア」への転回

コロナ前は文化人類学・外国語・戦争の記憶といった、射程の大きな「教養」的なテーマが目立ちました。しかしコロナ禍を境に、生活保護・点字・料理・農といった「目の前の生活」へとテーマが降りてきています。

2024年はいじめ・いじり・ADHD/ASDという教室そのもの、2025年はサンクコスト、2026年は妊婦と優先座席、そしてガザの子どもへの詩。「大きな世界」を教養として眺めさせる段階から、「いま起きていること」を当事者として引き受けさせる段階へ、灘は入試を進化させています。

③ 記号選択より記述、しかも二種類の記述

設問は記号選択が最小限で、記述が中心です。文章中の言葉をつないで説明させる設問と、文章中の一文の意味を本文外の言葉を自分で補いながら説明させる設問があり、割合としては後者が圧倒的に多い。

ここに灘の国語科のこだわりが表れています。「正確に読めているか」だけでなく、「読んだことを自分の言葉で人に手渡せるか」まで見ているのです。

点が頭打ちになる、本当の正体

灘の受験生であれば、基礎的な学力はすでに十分に持っています。文章そのものの難度も、実は極端に高いわけではありません。だから多くの場合、大枠の内容理解には困りません。一見、答案は「できている」ように見えます。

しかし、そこで頭打ちになるケースが少なくありません。原因は、細部の意味を自分で類推し、補いながら理解する力——そしてその理解を、第三者に伝わる言葉として組み立て直す力にあります。

プロからのワンポイント

灘の合否を分けるのは、「読めているか」ではありません。細部を自分の頭で類推できているか、そしてその理解を、他人にもわかるように書けているかです。

ここが甘いまま過去問演習を重ねても、答案は「大枠は合っているが浅い」まま止まってしまいます。

灘の設問の多くは、本文の言葉をそのまま引けば終わる作りにはなっていません。自分の中で咀嚼した内容を、本文にない言葉で、他人にも伝わる形に翻訳する必要があります。ここで多くの受験生は、「自分の中ではわかっている」段階から抜け出せず、答案が独りよがりな説明で終わってしまうのです。

エリオの個別指導 —「わかる」を「伝わる」に変える

灘対策で本当に鍛えるべきは、知識量でも解法パターンでもありません。細部を読み解く類推力と、その理解を他人に手渡す記述力、この二つです。エリオの個別指導では、次の3ステップでこれを育てます。

  • ステップ1|細部を疑う:あらすじではなく一文単位で「なぜこの言葉が選ばれているか」を類推する訓練。読み飛ばしていた「行間」を拾い出します。
  • ステップ2|第三者の目を持つ:自分の答案を「初めてこの文章を読む人」の目で読み返させ、わかっている本人にしか通じない説明になっていないかを検証します。
  • ステップ3|伝わる記述に組む:本文外の言葉で補いながら、他人に伝わる文として再構成する記述訓練を反復添削します。

この積み重ねの先にあるのは、「自分さえわかっていればいい」で終わらない答案です。深く理解した内容ほど、それを人にわかりやすく届けられて初めて意味を持つ——これは灘が校是「自他共栄」を通じて、受験生に投げかけているメッセージそのものでもあります。

一般的な過去問演習と、エリオの特化指導の違い

比較項目 一般的な過去問演習 エリオの灘特化 個別指導
見ているもの 大枠が合っているかどうか 細部の類推と、他者への伝わり方
記述の扱い 本文の言葉を並べて終える 本文外の言葉で補い、再構成する
自己評価 「自分がわかったか」で満足 「初見の他人に伝わるか」で検証
目指す答案 減点されない答案 「この子を教えたい」と思わせる答案

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おわりに — 灘が本当に求めている子へ

灘の国語は、単なる読解力テストではありません。自分から遠い他者を想像し、深く理解したことを、他人に伝わる言葉として差し出せるか——これを見ています。基礎学力があるだけでは届かない、その一段先を鍛えることが、合格答案への最短距離です。

「読めている」で満足せず、「伝わるか」まで詰める。その視点の転換が、灘の壁を越える第一歩です。